[東京 29日 ロイター] 福井俊彦日銀総裁は29日、都内で講演と質疑応答を行い、景気は緩やかながら着実に拡大している、との見解を示した。また、物価安定のもとでの持続的成長に努力する、と語った。
福井総裁は「10年前には企業も金融機関もバブル崩壊の後遺症に苦しんでいたが、その後10年間で日本の企業や金融機関はバランスシート問題や不良債権問題を克服し、現在では、景気が緩やかに拡大を続ける状況に至っている」とした。
その間の経済的環境変化としてのグローバル化について、新興国のプレゼンスの高まりを指摘。「新興国からの輸入の増加によって、先進国では、ディスインフレの傾向が80年代後半から観察され、90年代後半以降には、新興国を含め世界的な規模でのディスインフレの進行がみられている」とした。
一方で福井総裁は「より最近では、新興国の台頭に伴って、原油など一次産品の価格が高騰する動きもみられており、実体経済活動のグローバル化が、今後とも物価の抑制要因として働き続けるかどうかは、明白ではないように思う」と述べた。さらに「金融政策の観点からは、こうした点を含めて、グローバル化が物価の決定メカニズムにどのような影響を及ぼすか、引き続き研究を重ねていく必要がある」とした。
また金融市場のグローバル化については、「世界の投資資金が、パフォーマンスの良い投資対象を求め、国境を越えて機動的に動き回るという性質が一段と強くなっており、このような国際的な裁定取引は、今ほどお話した実体経済活動のグローバル化と相まって、各国の長期金利や株価など、金融資産価格間のリンクを強めている。金融市場のグローバル化は、市場規律を高め、市場機能を向上させるという意味で、基本的に歓迎すべきこと」だとした。
こうしたグローバル化の進展が金融政策運営に与えるインプリケーションとして、福井総裁は物価決定メカニズムへの影響をあげ、「各国の金融市場を通じてショックが世界的に伝播する可能性にどう対処するかということも、中央銀行として重要な関心事項」だと述べた。
その上で「金融政策は、金融市場や金融機関行動を通じて効果を発揮するもの。したがって、金融政策の有効性を高めるうえでは、市場参加者に対して政策の考え方をしっかりと説明することが重要だとした。
「経済学の分野をみても、以前は、金融政策が効果を持つにはサプライズが必要だという考え方もあったが、現在では、逆に、政策効果の向上には、金融政策の運営方針が民間部門の期待形成に円滑に反映されることが大切だという考え方が主流になっている」と指摘。
日銀では今年3月に新たな枠組みを導入し、「中長期的な物価安定の理解」の公表や2つの「柱」による経済物価情勢の点検などを示したとし、「この枠組みにさらに磨きをかけながら、物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現に向けて、努力していきたい」と述べた。
