【書評】橘玲著『マネーロンダリング入門』
【PJニュース 12月16日】- 新聞やテレビで「高度なマネーロンダリング」とおどろおどろしく報道された「ライブドア事件」から、約1年が過ぎようとしている。事件直後、『ヒルズ黙示録』を著した大鹿靖明氏でさえ「民法上の投資事業組合を介した特異な事件」とわたしに話していたが、そのとき「こんなスキームは海外タックスヘブンのSPCやチャリタブルトラストを利用したものなどの焼き直しで、アメリカでは80年代からある」と答えておいた。
わたしはこのライブドア事件、当初からそんな複雑な事件ではなく、資産査定の妥当性と会計監査の独立性の「単純な」問題だと踏んでいた。それを堀江貴文氏のインタビュー記事で事件直後にお伝えした。公判でもそのことが証明され、東京地検特捜部とマスコミが描いた「巨悪の構図」が崩れ去った。本著は「高度なマネーロンダリング」といわれたライブドア事件の種明かしをしてくれる。読み終えたあと、「なーんだ、そんな簡単なものだったのか」とうなずく読者も多いのではないか。
ライブドア事件に続いて、北朝鮮の核兵器問題やバチカン銀行事件、そしてアルカイダの資金調達問題など、世界を揺るがした事件をカネという尺度で描いているのがおもしろい。特筆に値するのはBCCI事件をわかりやすく解説していることだ。90年代前半、グローバル金融を震撼させたこの事件は、米フロリダ州の保養地、タンパにある銀行の破たんが発端だった。その当時、わたしはジョージア州アトランタにいて、勤めていた米会計事務所がこの清算手続きをしていた。ある程度その内幕を知る立場にいたので、その「巨悪の構図」には驚愕したものだった。この事件について、日本では日経新聞以外はあまり詳しく触れていなかったが、その後も国際金融に大きな傷跡を残す大事件だったのだ。
「トランスファー・プライシング」や「タックス・アービトラージ」など思い出深い用語も出てきた。増税がささやかれるこの国で、法人・個人の富裕層を国外に逃避させ、税制の土台を揺るがしかねないのがこれらのキーワードだ。結局、庶民がますます苦しい生活を強いられることは間違いない。そうならないためのリテラシーを身につけるにもこの本はお薦めだ。
livedoor Co.,Ltd
