ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)米シアーズ・ホールディングス(Nasdaq:SHLD)は、百貨店運営では苦戦しているかもしれないが、投資家のエドワード・ランパート氏の下、抜け目のないヘッジファンドのようになっていることを証明している。
ランパート氏の支配下にあるシアーズは、8-10月期に純利益の半分以上を、個別企業株のパフォーマンスに連動する仕組みとなっているエキゾチックデリバティブへの投資から上げた。「シアーズ」、「Kマート」店舗の売り上げは低迷しているものの、こうしたデリバティブ投資は、同社の8-10月期の純利益を前年同期比3倍の1億9600万ドル(1株当たり1.27ドル)に膨らませるのに貢献した。前年同期の純利益は5800万ドル(同35セント)だった。
投資家は、小売り事業の回復を期待していたため、8-10月期決算の発表後、シアーズ株は下落。16日終値は前日比9.89ドル(5.52%)安の169.26ドルだった。同社株は過去1年間、50%近く上昇しており、同社は8-10月期に自社株買いを減らした。
シアーズ株は、同業他社と比べ、割安感はない。08年1月期のアナリストの予想1株利益である10.39ドルに基づくと、株価収益率は16倍。09年1月期の予想1株利益である11.41ドルでは、15倍近い。
一方、JCペニー(NYSE:JCP)、ターゲット(NYSE:TGT)、フェデレーテッド・デパートメント・ストアーズ(NYSE:FD)などは来年度の予想1株利益ベースで14-16倍だ。
シアーズは、他社株を対象としたデリバティブへの投資により、8-10月期に1億0100万ドルの利益を税引き後ベースで上げた。シアーズの広報担当者は、デリバティブがどの企業の株式に連動しているのか明らかにしなかった。
シアーズは、こうした投資は「かなりのリスク」を伴い、その「タイミング、規模、パフォーマンスにより、(将来の業績は)プラスあるいはマイナスの方向に大きく影響される可能性がある」とコメントした。
ストラクチャード投資商品について助言しているDTBキャピタル・グループのデビッド・クライン社長によると、シアーズが使っている金融デリバティブは「トータルリターン・スワップ」と呼ばれる。実際に購入したり、購入するために債務を抱えたりすることなく、株式やその他資産に高リスクの投資を行うものという。トータルリターン・スワップには、投資の流動性を高めたり、税効果を伴ったり、バランスシート上で利益として計上できるものをもたらすなどのメリットもある。
シアーズが金融スワップを使ったのは今回が初めてではない。05年5-7月期には、6億ドル相当の変動金利が絡んだスワップ取引により、6000万ドルの利益を計上している。今年8-10月期のスワップは、名目元本の総額が3億8700万ドルで、特定の債券にはリンクしていない。
会長として業務を監督する積極的な役割を果たしているランパート氏は、余剰現金を小売り業務と無関係の投資に充てることを許可されている。16日発表された8-10月期決算は、シアーズがもはや単なる小売企業ではないことを示唆するものだ、と業界ウォッチャーは言う。
シアーズのキャッシュフローが改善したのを受け、ランパート氏は8月、小売り以外の「買収、合弁事業、提携」を検討する予定だ、と投資家に述べていた。シアーズ株が上昇するにつれ、ランパート氏は自社株買いを縮小。8-10月期にシアーズが自社株買いに投じた金額は2億8900万ドル。2-4月期の4億1300万ドルを下回っている。
ゴールドマン・サックスのアナリスト、アドリエンヌ・シャピーラ氏は、売り上げの減少が続いていることは懸念されるものの、デリバティブによる利益は「経営チームが利益が上げる方法を知っており、買収に向けた資金を準備していることを示すものだ」と述べた。シアーズは、アンハイザー・ブッシュ(NYSE:BUD)、ホーム・デポ(NYSE:HD)、ラジオシャック(NYSE:RSH)など、かなり幅広い業種にわたる企業の買収を検討しているとの思惑が最近浮上している。
(11月17日付のHeard On The Streetより)